11年は貿易赤字の可能性も

2011年、日本は貿易赤字に転落する

大震災を受け11年の日本の経常収支はどのように変化するだろうか。

 

まず貿易収支だが、大震災は一時的にせよ当該国の供給力を低下させ、貿易バランスを悪化させる。今回は貿易収支がゼロから場合によっては赤字化する可能性もある。

 

10年のわが国の通関ベース貿易黒字は、6.6兆円(GDP比1.4%)の規模であった(品目別に分析する必要から国際収支ではなく通関貿易のデータを使用)。

 

先行きを検討するため、便宜的に輸入に大半を依存する鉱物性燃料、今回のサプライチェーン(供給体制)問題等で供給の低下が問題となっている電子部品・自動車(部品を含む)およびその他の3パートに分類して考えたい。

 

10年の実績をみると、わが国がエネルギー源の大半を輸入に依存していることを反映し、原油や天然ガスなどの鉱山物性燃料は16.3兆円赤字であった。だが、電子部品・自動車関連黒字(13.2兆円)と「その他」の黒字(9.7兆円)が鉱山物燃料の赤字を上回り、全体としては、貿易黒字となっていた。

 

11年は、原子刀発電を火力発電で代替するための鉱物性燃料輸入増加に加え、原油・天然ガス等の価格上昇と円安によって鉱物性燃料の輸入金額が押し上げられる。この鉱物性燃料関連の赤字は一段と悪化する可能性が高い。

 

電子部品や自動車・関連製品黒字については、関連セクターの重要工場の被災による供給力低下を受けた輸出の減少・黒字縮小が見込まれる。一方で「その他」の黒字は家計消費の停滞が輸入を抑制するため、黒字はやや拡大する可能性が高い。

 

10年の黒字・赤字の規模から計算すれば、10%の鉱物性燃料の赤字拡大と、10%の電子部品や自動車・関連製品の黒字縮小は、わが国の貿易黒字をそれぞれ1.6兆円、1.3兆円縮小させる。

 

一方、家計消費減少の影響については、消費の増減に関する限界輸入性向が20%程度とすると、家計消費―%の低下は輸入額を0.6兆円減少させる(「その他」の黒字拡大につながる)こととなる。

 

仮に30%の鉱物性燃料の赤字拡大、20%の電子部品や自動車・関連製品の黒字縮小、1%の家計消費低下と仮定すると、貿易収支がほぼゼロに縮小する。

 

一方、鉱物性燃料の赤字が50%拡大、電子部品や自動車・関連製品の黒字が30%縮小した場合は、約5兆円の貿易赤字に転じることもありつる。