日本の経常赤字化は長期金利の上昇をもたらす可能性が
日本の貯蓄超過の象徴であった経常黒字が縮小に向かうことは長期金利にどのように影響するだろうか。
内閣府が10年度の経済財政白書で実施した分析によると、経常赤字国については対GDP比1%財政赤字が拡大した場合、経常黒字国では金利は0.08%しか上昇しないのに対し、経常赤字国では0.26%の押し上げ効果があるとしている。
日本の財政赤字は今回の震災を受けてGDP比で再び10%を超える可能性もある。その場合、経常黒字であれば長期金利の押し上げ効果は0.8%程度だが、赤字国に転落すると長期金利押し上げ効果は2.6%に拡大、日本の長期金利が1%以上上昇する可能性があることを示している。
こうした分析は1つの例であり、必ず実現するとはいえないが、経常赤字化した場合にある程度のスワップ金利上昇の可能性があることを示している。
今回の日本の場合、貿易収支は赤字化する可能性があるものの、経常収支は黒字を維持する公算が大きい。そのため市場の大きな動揺は避けられるとみられ、ここ1、2年については復興に向け国債発行による資金調達は可能だろう。
しかし「成熟した債権国」に移行するとすれば、それは経常赤字を伴う「債権取4崩し国」の段階に1段階歩を進めることを意味する。
復旧に集中する時期が過ぎたのちは、復興への努力と同時に、5~10年先をにらんで、①経常収支の均衡が大きく損なわれないよう法人税制改革によりサプライサイドを強化する手を打つ一方、②税財政面で財政赤字・政府債務の増加を抑制する戦略について議論を具体化してゆくことが重要だろう。